2016年3月24日木曜日

『王とサーカス』米澤穂信

2016年版の「このミステリーがすごい!」で国内篇第1位になった作品。

作者の米澤穂信は、昨年は『満願』で1位を取ってたから、このミスで投票するような人たちには気に入られてる作家らしい。


面白かった。
大刀洗万智という最近フリーに転向したばかりだというジャーナリストが、ネパールに滞在中王族が射殺されるという事件に遭遇して、その事件を追いかける中で、自分が伝える役割を担うことに対して疑問を持ったり、自問自答したりしていく話。
ミステリー仕立てにはなっているけど、たぶん、本筋は事件解決ではないと思う。
世間に向けて何かを伝えるっていうのはどういうことなのか、そういうことをテーマにしてるんだと思う。良かれと思ってやったことがある一部の人達に対しては悪になることもあるっていう事実に、どうやって向き合って行くべきなのかなぁ、みたいなことを考えた。

ネパールの王族殺人事件は実際に起こった事件らしい。それをテーマにして、こういうフィクションに仕立てあげるのは、なかなか凄いなぁと感心した。

「ここがどういう場所なのか、わたしがいるのはどういう場所なのか、明らかにしたい」

大刀洗が最終的に行き着いた答えはそんな感じだったみたいだけど、そんなのは、ことさらジャーナリズムに限定しなくても、生きる理由として誰だって持っている動機なんじゃないかなぁと思う。