2014年6月8日日曜日

『定理が生まれる -天才数学者の思索と生活-』セドリック・ヴィラーニ


2010年にフィールズ賞を受賞したフランスの数学者,セドリック・ヴィラーニによる,自身がフィールズ賞を受賞するまでの2年間の物語だ.

数学者が自身の研究生活について書くという,非常に珍しい本だ.

数学者というのは,滅多に自分の仕事場は公開しない.
どれだけ試行錯誤しようとも,そのような痕跡は微塵も残さずに,結果だけをスマートに発表する,そのような人種だ.

私自身,そのようなこだわりに非常に好感を持っていて,その都度報告しなければならない企業のシステムにほとほと嫌気が差していたりする.まぁ,企業は人件費の面でも,その他の面でも,やはり損失を出すわけにはいかないという理由があるんだろうけど.

だから,こんな本は本当に珍しい.

なんちゃって数学者,というか,数学者崩れのような人々がこういう本を書くことはあるだろうし,ドキュメンタリーのように,数学者を第三者が描くこともあるだろうけれど,数学者自身がこのような本を書くというのは,滅多にないことだ.

Amazonとかだと,帯なしのイメージが載っているけど,書店には著者の写真がでかでかと写し出された帯が付いた状態で販売されている.数学に興味がなくても手にとってしまうんじゃないかというインパクトだ(中をパラパラとめくって,買うことはしない,というパターンが多いだろうけれど).

昔,フィールズ賞に憧れたことがあったなぁという懐かしさ,自分にもっと才能があれば,数学の研究を続けることが出来ていたのに,という悔しさ,研究はするにしても,数学は選ばなくて正解だったのかもなぁという安堵感,色々なものを感じながら読んだ.

最先端の研究に,諦めることなく必死で取り組んでいる姿勢に,自分も,もっともっと一生懸命にならないと,と思った.

一生懸命になれるフィールドに移ろうと,そう思った.

『ゲーム理論で勝つ経営 -競争と協調のコーペティション戦略-』

ずっと前に絶版になってる本なんだけど,会社の人から譲り受けて読んでみた.

ブログにも何度か書いてる気がするけれど,ゲーム理論にはもともと興味を持っていて,しっかりと理論的な部分から使いこなしたいとは思っている.
これはゲーム理論を企業間での競争,協調にどのように役立てていくかを豊富な例と共に論じている本だ.

本の存在自体知らなかったんだけど,読むことが出来てよかったと思う.
こういう本の存在をこれまで知らなかったっていうのは,非常にもったいなかった.

おそらくはゲーム理論的戦略,なんていうわけではなく,ただ,良い戦略だと思って実行に移したものを,著者らがゲーム理論的に考察をした,ということなのだと思うのだが,視点の問題だと思う.
その企業独自の考えだったっていう結論にせず,定式化して,汎用的に使える武器,考えにしたっていうのがこの本の良さなのかな,と思う.

今後,企業ではなくて,国をどうするか,という視点で,色々な物事に取り組んで行きたいと思ってるけど,そういう時にも,こういう視点は必要だと思う.

『Help!』Philip Prowse

英語の勉強のために読んでた本.英語に慣れること,単語の習得,自然な英語表現の勉強と同時に,少ない語彙でもきちんと使えば多くのことを表現できるんだっていうことを知った.

1冊も満足に完成させたことがないにも関わらず,自らを小説家だという男が主人公.
彼には,全体の序章だけ,過去に公開したことがある小説があった.もちろん,全体が完成されてはいない.
ある時,その序章が面白かった,続きを書いてほしいという出版社の人間に出会い,ノートパソコンを手に入れる.それまで主人公は手書きだったが,出版社の人間がノートパソコンを購入してくれたんだ.
そのノートパソコンには,色々な作業を手伝ってくれる音声付きのヘルプ機能が備わっていた.
普通なら,こちらから呼び出した時に助けてくれるヘルプ機能だが,図々しくも向こうから勝手に手助けをしてくる.colour(イギリス英語)は間違っている,color(アメリカ英語)だと指摘するのは序の口,なぜか,知らぬ間にコーヒーが出来上がってたりすることも.
とにかく,あまりにも身勝手なヘルプ機能に嫌気が差して,川に放り投げた.
そして,家に戻って寝て,起きたら出版社の話も何もかも存在しない事実で,結局夢だったんじゃないかという,そのようなお話.

私でも読めるような平易な英文なんだけど,非常に楽しく読むことが出来た.

徐々に難しい本にステップアップしていきたいと思う.

2014年6月1日日曜日

『刀語 4』西尾維新

『刀語』シリーズ第四話,薄刀・針.

メインは虚刀流七代目当主鑢七花と,日本最強の剣士,錆白兵との一戦だ.

でも,描かれていたのは鑢家家長,鑢七実と真庭忍軍十二頭領,真庭虫組の面々との戦いだ.

まるでエイプリルフールにでも書かれたんじゃないかという肩透かし具合だけど,アニメで見てたから,そういう肩透かしにも抵抗なく,真面目に読書に取り組むことが出来た.

才能がなくて苦しんでる,興味がないことに真剣になれなくて困ってる人間としては,鑢七実の悩みなんて知ったことか,という感じ.

1度や2度見るだけで完全に理解してしまう,常人離れした,怪物じみたそんな才能,羨ましくもあるけれど,そんなものに少なくとも自分は縋りたくはない.

熱血とか,スポ根とか,そういうものが好きなわけではないけれど,必死で悩んで,必死で努力する姿が美しいと思う.



『刀語』もあと8冊.折り返し地点間近.
週一で土曜日に読む習慣をつけようと先週決意したけれど,我が家の財政状況に負担が掛かりそうだから,2週間に1冊にすることにした.