2010年にフィールズ賞を受賞したフランスの数学者,セドリック・ヴィラーニによる,自身がフィールズ賞を受賞するまでの2年間の物語だ.
数学者が自身の研究生活について書くという,非常に珍しい本だ.
数学者というのは,滅多に自分の仕事場は公開しない.
どれだけ試行錯誤しようとも,そのような痕跡は微塵も残さずに,結果だけをスマートに発表する,そのような人種だ.
私自身,そのようなこだわりに非常に好感を持っていて,その都度報告しなければならない企業のシステムにほとほと嫌気が差していたりする.まぁ,企業は人件費の面でも,その他の面でも,やはり損失を出すわけにはいかないという理由があるんだろうけど.
だから,こんな本は本当に珍しい.
なんちゃって数学者,というか,数学者崩れのような人々がこういう本を書くことはあるだろうし,ドキュメンタリーのように,数学者を第三者が描くこともあるだろうけれど,数学者自身がこのような本を書くというのは,滅多にないことだ.
Amazonとかだと,帯なしのイメージが載っているけど,書店には著者の写真がでかでかと写し出された帯が付いた状態で販売されている.数学に興味がなくても手にとってしまうんじゃないかというインパクトだ(中をパラパラとめくって,買うことはしない,というパターンが多いだろうけれど).
昔,フィールズ賞に憧れたことがあったなぁという懐かしさ,自分にもっと才能があれば,数学の研究を続けることが出来ていたのに,という悔しさ,研究はするにしても,数学は選ばなくて正解だったのかもなぁという安堵感,色々なものを感じながら読んだ.
最先端の研究に,諦めることなく必死で取り組んでいる姿勢に,自分も,もっともっと一生懸命にならないと,と思った.
一生懸命になれるフィールドに移ろうと,そう思った.