2014年10月20日月曜日

『C.M.B. 27』加藤元浩

『C.M.B.』の27巻.

「アステカのナイフ」
ある家庭の父親が,アステカのナイフが喉に刺さり死んでいる状態で発見された.
母親が逮捕され,無実を証明するために息子が森羅を訪ねてくる.

結末が少々ショックなんだけど,ここから得られる教訓は,余計なことはしない,っていうところかな.さじ加減が難しいけど.

「爆破予告」
ブルーブル社の本社ホールで恐竜展が開催される.
開催前日に迫った日,何者かに寄る爆弾予告が.

ニューヨーク証券市場に上場しているという小話も,きちんと核になるストーリーに織り込んでいるところとか,ストーリーテラーとしてさすがだと感じる作品だった.

「幸運」
殺人の容疑で拘置所に入れられた男が,ある人に頼まれたと言う森羅と七瀬のお陰で釈放された.
自分の力でここまで来たという男.彼に迷惑を吹っ掛ける奥さんと友人二人が,実は男を救ってほしいと森羅に頼んだ張本人だった.
そこで男は気づく,自分の力で生きてきたと思っていたけれど,そうじゃなくて,幸運だったからだと.

『暗殺教室』読んでても思うんだけど,架空の登場人物っていうのは,役割を持って出てくる人たちばかりだから,皆賢い.それぞれの人生の中で,それぞれが,様々なことを考えながら生きている.現実の世界を見てみると,どんなに贔屓目に見ても,必ずしもそうじゃない人々がたくさんいると思うけれど,フィクションだと,それぞれの登場人物が,それぞれのポジションで必死に生きてる.
だからこそ,そこから学ぶことはたくさんあるのかなと思う.

「大入道の屏風」
番外編,マウが主役の『M.A.U. “ブラック・マーケットの魔女”の事件目録』の2作目だ.うん,確か2作品目だったと思う.はっきり覚えてないけれど.
マウが経営するお店が金欠になり,キャッシュで50万ドル支払ってくれる客を探したら,その客から,数多のコレクションの中から大入道の屏風を探してほしいという依頼を受けた.
マウは見事にその仕事を完遂したんだけれど,その過程で部下にぶつける発言が印象的だった.
簡単な解決法があるのに解決法が考えつかなかっただけだという部下に対して,

「違う!
あんた達は周りが自分の思う通りになるのを待ってるだけ
現実がどうしようもないときに
知恵を絞って何とかするのが「考える」ってことよ!」

と叱咤する.

頭がいたい・・・
ただ,やっぱり想像力には限界があって,思いつかないという場合もある.
じゃあ,どうやったら思いつくようになるのかっていうと,色々な経験を大切にすることなんじゃないかなぁと個人的には思う.
過去に身に付けた知識,経験に立脚したものが,これから先の自分自身の能力になるわけだから,やっぱり,勉強って大切なんだなぁと思う.

『Q.E.D. 49』加藤元浩

大学院生時代から集め始めて,かれこれ49巻.
まぁ,集め始めた時点でそこそこ発売されてたけど.

49巻は,2作品収録されてる.

「無関係な事件」
失敗続きの就活生が,ちょっとした出来心がきっかけで香港マフィアの抗争に巻き込まれてしまうという話.
メインの話がマフィア抗争の末の殺人事件の解決ではなく,そこに巻き込まれた一般人の物語,というところが面白いと思う.
企業からお祈りメールがたくさん届いて自信をなくしていたけれど,抗争に巻き込まれ,足を怪我した弟を救うために必死になっているところで,「オレ 悪くねぇな」と悟るというオチ.

私もお祈りメールはたくさん届いた.そういう中で,唯一採用してくれた会社に入ったんだけど,自分自身の価値について,それほど考えていたわけじゃない.でも,会社入って思ったことは,そんな自分に期待してくれている人がいるんだっていうこと.
だから,改めて人生を見つめ直して,今自分が出来る精一杯のことをしようと思った.

「ラブストーリー」
大学時代,映画作りに掛けた男.
結末が思いつかなくて,そのまま放置していたものを,完成させようと考えたところで,水原可奈に出会う.ヒロイン役の女性にそっくりだったらしい.
水原可奈をヒロイン役として,ラストシーンに使う映像を撮影後,編集する前に,男は死んでしまった.
映画を完成させようと考えた水原は,その役割を燈馬想に丸投げ.
さてさて,燈馬が考えた結末とは・・・

というお話.
人があの世に持っていけるものは3つだけ,「理」と「美」と「愛」だという話が中核にある.
男には「理」も「美」もないから,持っていけるとすれば「愛」だという.
自分にはピンと来なかった部分が結構ある.
加藤元浩の作品は,深い意味があるようで,単なる娯楽作品のようで,良く分からないんだよなぁ.

2014年10月11日土曜日

『三国志 2』宮城谷昌光

第一巻の感想はこちら

読み始めたのはいったいいつだったんだろうと思うほど以前に読み始めた第二巻.

第一巻の感想を書いてるのが昨年末だから,第二巻は今年に入って開いたらしい.読破するのに約1年掛かってる.本格的に読み始めたのは実は10月に入ってからだから,1週間ほどで読んだという形になるんだけれど.

人物に焦点が当たっていた第一巻に比べて,政治の流れが良く分かる作品になってた.第一巻ではスポットライトが当たっていた曹騰(曹操の祖父)だが,今巻では基本的に出てこず,梁冀の暴政と,それ以降の宦官の暴政がメインになってた.そしてラストに近づくにつれ,いよいよ曹操,孫堅,劉備がメイン人物になる予兆を感じ始めた.黄巾の乱の始まりだ.

苦しかった第一巻.第二巻の終盤になって,ようやく宮城谷三国志の世界観にも慣れ,読むスピードが上がってきた.
この調子で第三巻に手を付けたいと思う.

2014年10月10日金曜日

『ソロモンの偽証 第Ⅰ部・第Ⅱ部・第Ⅲ部』宮部みゆき


『ソロモンの偽証』三部作.面白くて一気に読んだ.

第Ⅰ部は,事件が起こり告発状が送られて,マスコミが騒ぎ立て,その結果新たな死者を生み出すことになってしまった事件の全体像が描かれてる.藤野涼子が学校内裁判をしようと決意するところで終わっている.それぞれの出来事を,それぞれがどういう風に捉えたのかがしっかりと描かれてて,前向きな藤野が微笑ましかった。


第二部は,学校内裁判を開こうと決意し,その開催までの各自の奮闘がメイン.途中である程度の結末は分かったけれど,それでも目が話せなかったのは,彼が,どういう気持ちでいるのかが気になったから.すべてを理解した上で,何を求めようとしているのかが分からなかったから.

第Ⅲ部.学校内裁判での一部始終が描かれてる.


作品全体を通して,アマゾンの評価は様々だったけど,私自身は満点を付けたい.
自分の中学生時代を思い返してみて,今までの自分の人生を振り返って,神原弁護人の気持ちが痛いほど良く分かる.だからこそ,自分の未来について今一度考えてみようと思ったりもした.

宮部みゆきがこの作品で描いたのは,友達を死なせてしまった少年の苦悩だ.
そこから伝わってくるメッセージは,月並みだけど,友達の大切さと,赦し,贖罪かなぁ.

存在自体は知ってたけど,すぐに読もうとは思わなかったんだけど,映画化されることを知って,読んでみようと思った.
きっかけとしてはその程度なんだけど,このタイミングで読めてよかったと思う.

『続・終物語』西尾維新

物語シリーズのおまけ.

読んでも読まなくても変わりがないストーリーではあるけど,これまでの作品をすべて読んだ人になら,勧めてもいい気がする.

物語シリーズは結局のところ,過去に向き合ってこなかった不幸な少年のストーリーなんだろうなぁという結論に至った.

『刀語 7』西尾維新

刀語の第七話。

鑢七花が、姉の鑢七実を殺す一作。作者がこのストーリーで伝えたかったことはいまいちよく分からないけど、ただ、少しずつ変化する七花が、今後どうなっていくのかが気になる作品だった。

最近,自分の中で読書に求めるものが少し違ってきているような感じがする.
昔は面白ければOKっていう感じだったんだけど,ストーリーの良さとか,メッセージ性を求め始めてて,面倒な読者になったなぁと感じる.

将来,1冊でも良いから本を出して認められたいと感じる自分が,読者として気をつけてることは,単なるシリーズ物ならともかくとして,続き物の作品は,きちんと最終話を見届けてから全体として評価したいっていうこと.

だから,刀語も,あと5冊,頑張って読もうと思う.

『ザ・クオンツ』

エド・ソープに始まるクオンツの歴史が描かれてる.
臨場感があって面白かったけれど,自分が求める世界とは違うのかもっていう印象が強く残った.

サブプライムローン危機や,リーマン・ショックの原因になったのがクオンツだ,というような論調で書かれているけど,実際は少し違う気がする.単に運用していただけで,そこにどれほどの金額をつぎ込むかを決めたのは,別の人間のはずだし.

いずれにせよ,読後一番強く感じたことは,もっと人と触れ合えるところで自分の能力を発揮したいっていうことだ.