2015年5月31日日曜日

『三国志 6』宮城谷昌光

折り返し地点の第6巻。
ほかの本読んでたから、三国志を読むのは久々だった。

この巻には、劉備が孔明を訪れるところや、赤壁の戦いが描かれてる。
相変わらずのんびりしている劉備を尻目に、孔明が対策を立てて、劉備、孫権、曹操の三者の対立構造を実現しようとしている。

曹操は、後継者を誰にするか、というところでも悩み始める、といった記述で巻の最後は終わっている。
三国志全体から見れば、ひとつの山場を越えた、という感じなのだろうか。
正直なところ、劉備の良さがまだまだ出てきていない。というか、自分には見えない。この後、どういう動きをするのか楽しみだ。

2015年5月29日金曜日

『女王はかえらない』降田天

『このミステリーがすごい!』大賞の大賞受賞作品。

読後の感想・・・『葉桜の季節に君を想うということ』に似てる。
たぶん、このストーリーの内容は、この一言があれば事足りるような気がしてる。

非常に面白かった。
面白かったんだけど、あっけなくもあった。
もしかしたら・・・みたいに思ってたことが、その通りだったっていうことが分かって、期待が裏切られなかったことにちょっとだけショックを受けた。

この手のトリック、記述の仕方に出会ったことがなければ、より楽しめる作品にはなってるんだと思う。

設定の中には、少々強引じゃないか、と思うのようなものも正直ある。一人称が「ぼく」だったり、登場人物が全員アダ名だったりカタカナ表記だったり・・・
気になり始めたら、トリックに辿り着くまではあと一歩だ。

小学校のスクールカーストなどが取り上げられてて、クラスの女王様的存在のマキに、転校生のエリカというライバルが出現するところからストーリーは始まる。
マキについていけないと感じ始めた人々が、徐々に、エリカ側に付き始めて、やがて、クラスはマキグループとエリカグループに分断される。
そんなマキとエリカの確執がきっかけとなり、事件が起こる。

結末は、本当に衝撃的だった。
小学生が、こんなことして良いのか、という・・・
怖い小説だった。

仲の良い人には、勧めてみたいなぁと思う。

2015年5月22日金曜日

『おまえさん』宮部みゆき


そこそこの長編だったけど、全然長さが気にならないくらい面白かった。
とは残念ながら言えず、信之輔のせいで、途中、非常にイライラした。

帯に、「これは、恋愛小説です」と書かれていて、どんな感じの内容なのか、非常に楽しみだったんだけど、確かに、恋愛がキーワードになってた。

おでこの生みの親や、夜鷹や、生薬屋の娘に、同心・間島信之輔。たくさんの人々の恋愛話を聞かされて、非常に疲れた。

でも、そんな中でも弓之助、やっぱり揺らぐことなく、バシッと謎解きを実行。
『ぼんくら』、『日暮らし』ときて3作めのこのシリーズ。もはや弓之助は名探偵だ。
頭が切れる少年とかいうレベルを超えて、完全に、謎解きを期待される役回りになってる。
この年で、この役回りは辛いだろうなぁと思いつつ、やっぱり読者の立場で、弓之助の活躍を期待してたりもする。

弓之助は言った。

「世の中に起こるすべての出来事が、仮に因果の糸――因果律で結びついているとするならば、物事の見え方が変わってくるということでございます」

「本音なんて、みんな幻でございますよ」

因果律の話はなんとなく理解は出来たけど、本音は幻だとか言われると、なんだかなぁ、夢も希望もない。

間島信之輔の縁戚、本宮源右衛門の発言も紹介。
「何をどうしたらいいかわからぬときは、学問するのが一番よろしい」
悩める青少年に伝えたいメッセージだ。
そして、私自身にも身に覚えがあるメッセージだった。

平四郎は、弓之助を評して

「講釈師、見てきたような嘘をつき」

と言っているが、私も、そのくらいリアリティのある話作りが出来れば、自分の小説家という目標も、近い将来実現できるんだろうなぁと思う。


ひとまず、ぼんくらシリーズは全て読み終わったということで、続編の発売を期待しよう。



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おまえさん 上

おまえさん 下

2015年5月10日日曜日

『暗殺教室 14』松井優征

いよいよ文化祭当日。

スポンサーを付けたA組に対して、山の幸を味方に付けたE組。
A組には及ばなかったけれど、E組は大健闘したと思う。
材料がなくなって、更に山から食材を調達してこようとする生徒たちに、殺せんせーは、「これ以上採ると山の生態系を崩しかねない」と諭す。
勝負よりも大切なことがあるっていうことを教えると同時に、全ての生き物が、他の生き物との縁によって活かされてるんだ、ということを教えている。

文化祭が終わると、いよいよ2学期の期末テストの季節だ。
3学期の学年末は、高校を一般受験するE組と内部進学するA組では試験内容が大きく異なり、同じ土俵で勝負出来るのは今回が最後だ。

よくもまぁ、どんぞこからここまで這い上がれたものだと感心する。
勉強っていうのは、教える側よりも教わる側の姿勢のほうが大切だと思うけれど、やはり指導者も大切だっていうことを認めなければいけないと思う。

体心立方格子についての数学の試験問題が面白かった。
解説としては漫画の内容で良いと思うけれど、実際に試験で記述することを考えると、もう少ししっかりと考えなければならないと思う。
そのあたり、どうやって書くべきかなぁと考えてしまった。

興味があれば、解いてみてください。


『暗殺教室 13』松井優征

死神との決着がつき、そして、渚の家庭環境が明かされる。

自分の人生はゲーム「母さん」の2周目だという渚。
でも、多かれ少なかれ、若いうちは親の期待に答えなきゃって思ったり、親の思い通りに動かなきゃいけない人間なんじゃないかって思ったり、するんじゃないかなぁと思う。

悩める渚の母親に対して、殺せんせーは、「渚君の人生は渚君のものだ 貴女のコンプレックスを隠すための道具じゃない」と諭そうとするが、結局失敗。

そんな中、殺し屋が登場。タイミング悪く殺し屋と対峙することになった渚と、その母親。
そういう状況で、渚は、自分の意思が固まったみたいだ。

「母さん
僕は今このクラスで…
全力で挑戦をしています
卒業までに…結果を出します
成功したら…髪を切ります
育ててくれたお金は全部返します
それでも許してもらえなければ
母さんからも卒業します」

母親に対する心情の吐露としては、これ以上のものはないんじゃないかというくらい格好良いなぁと思う。

産んで育ててくれただけで…
すっごい感謝してる
……贅沢かも知れないけど
――ただ我が子がこの世に生まれて
そこそこ無事に育っただけで喜んでくれたら
全てが丸く収まるのに

こんな風に親に対してる思ってる渚が健気に思う。
こんな子供なら欲しいなぁと思った。


さてさて、椚ヶ丘中学校は文化祭の季節だ。出し物をするにしても立地条件で本校舎には大きく水をあけられているE組。
ここでも、殺せんせーの解決策が光る。
山に囲まれていることを逆手に取って、山の幸をふんだんに使った料理を提供しようと。

文化祭がどうなるのかは、次巻のお楽しみらしい。

『暗殺教室 12』松井優征

ロヴロ曰く、世界最高の殺し屋、死神が登場する。

烏丸とイリーナを近づけさせようと一計を案じる生徒たち。
しかし、そのせいでイリーナが決別してしまう結果に。

そんな隙を狙って、死神が手を出してくる。
イリーナを誘拐したというのだ。

サッカー観戦に行っている殺せんせー抜きで、生徒たちだけで助けに向かおうとするが、あっけなく捕まってしまい・・・

捕まりこそしたけれど、この思いっきりの良さとアクティブさは、やっぱり見ものだと思う。
こんな中学生、きっとほとんどいない。

『明智警部の事件簿 2』天樹征丸,さとうふみや,佐藤友生

非常に柔らかいタッチで明智警視が警部だった頃の活躍を描く、『金田一少年の事件簿』のスピンオフ作品。
金田一とは違い、警察官が主人公だから、そういう点でも面白い。

「正義の姿 2~4」
南条さんの判断が誤りだったんじゃないか、というところで、容疑者が死亡して第1巻が終わってしまっていたから、非常に気になっていた。

殺人の容疑者になってしまい、自力で解決しようとする南条さんと、南条さんが犯人のわけがないと信じて、真犯人を見つけ出そうとする明智さん。
最終的にはやっぱり明智さんが事件を解決していく。
フィクションとはいえ、キレッキレだ。

南条さんみたいなタイプの人、好きだなぁとか思ってしまった。

「あこがれの警官」
明智警部の相棒、小林竜太郎があこがれている警官のお話。

長年交番勤務をしてきたゲンさんが、突然警官を辞めると言い出した。
きっかけは、交番の近くで事件が起こったから。
よくよく事情を確認すると、女性が襲われて悲鳴を上げたのに、ゲンさんは気づかなかったという。
それがきっかけで、ゲンさんは、自覚はないけど居眠りをしていたせいだと自分を責めている。

果たして真相は・・・?

ポリシーを持って生きている人は格好良いなぁと思ってしまうストーリーだ。

「引き裂かれた絆 1~2」
小林竜太郎が明智警部のパートナーを外される?
なんか凄腕の外国帰りの男とかが登場して、小林くんの代わりに明智さんの相棒になった。
それでも小林くんはなんとか明智さんに認めてもらおうとするけれど・・・

何だかんだで明智さんは、いけ好かない外国帰りよりも小林くんを頼りにしてる感じがして良い気分になる。
次巻には解決編が収録されるはずだから、事件の結末も楽しみだ。

『金田一少年の事件簿R 5』天樹征丸,さとうふみや

明智警視の学生時代の活躍を描く作品全編と、蟻地獄壕殺人事件の5話までが収録されている。

「学生明智健悟の事件簿 1~4」
金田一もそうだけど、明智警視も、犯人に対しては非常にクールだなぁといつも思う。
知り合いが犯人だって確信を持ってしまったら、その時点でもっと取り乱すのが普通じゃないかと思うんだけど、「自首してくれ」とか優しさを見せながらも、あなたが犯人ですっていうことを、理詰めで説明していく。

もう少し、人間らしい葛藤を見たかったなぁというのが正直なところ。
その点、コナンなんか、もっと、「そんなわけない」とか言いながら、必死で犯人じゃない証拠を探そうとする感じだから、好感が持てる。

「蟻地獄壕殺人事件 1~5」
いつきさんが事件のきっかけを作るというお決まりのパターン。
以前はちょくちょく登場してたけど、『金田一少年の事件簿R』になって初めての登場だ。

舞台設定が非常に効果的になされていて、面白いなぁと思う。

今後、どう展開していくのか楽しみだ。

『日暮らし 上・下』宮部みゆき

『ぼんくら』に続いて、『日暮らし』も読んでみた。

『ぼんくら』の感想はここに書いてるから、良かったらどうぞ。

今作は、『ぼんくら』と同じように、最初に数編の短編があり、その後、「日暮らし」という長い長い章に突入するという構成になっている。
パッと見の構成こそ同じだけど、その組み立て方は全然違う。
解説の言葉を借りると、

「『ぼんくら』では、一見すると無関係に思えた冒頭の短篇が、次第に一つに繋がっていくダイナミズムがあったのに対し、本書は一話完結の短篇の中に長辺部分の伏線が張り巡らされており、後半になるとパズルのピースが嵌まるべきところに嵌まって意外な絵を浮かび上がらせる驚きがある。」

だから、最初は、このストーリーは、後半どんな風に絡んでくるんだろうと考えたりしてて、どうやら直接は無関係なんだ、ということに気付くまでに少し時間が掛かった。

長編、「日暮らし」は、佐吉が母親の葵を殺めたという事件が起こり、佐吉が捕まったことから始まる。

湊屋の力でもみ消されたけれど、本当は佐吉がやった、ということで落ち着いているため、冤罪を晴らす目的で平四郎が甥っ子の弓之助とともに事件を解決に導く。
そう言うと平四郎が事件を解決に導くみたいだけれど、実際のところ弓之助が中心だっていうところが面白いと思う。

相変わらず弓之助が冴えに冴えまくってる。これでおねしょしなければなぁ・・・

どんなにきれいに字が書けても、所詮は真似事で自分の字を書く人には劣る、と話す弓之助に感心させられた。

『ぼんくら』では測量大好きだった弓之助、『日暮らし』では測量をやめて、測れないものに目を向けようとし始めたらしい。
どんどん成長していく弓之助が、今後どうなっていくのか楽しみだ。

次は『おまえさん』を読もうと思う。



うーん、色々書いたけど、内容がない。
まぁ良いや。

『モンテ・クリスト伯 7』アレクサンドル・デュマ

いよいよ最終巻。
今巻の前半で、ヴァランティーヌが毒薬によって死の危機に。
そのとき、モンテ・クリスト伯は・・・。

そして、モンテ・クリスト伯の残るターゲット、ヴィルフォールとダングラールは・・・。

ヴィルフォールを苦しめたことがきっかけになって、ヴィルフォールのみならず、彼の子供までが命を落とす結果になってしまった。そして、そのことを苦悩したモンテ・クリスト伯は、復讐をすることが果たして正しいことなのかと苦悩し始める。

どんどんストーリーが暗い方向に進んでいっていることが気がかりだったけれど、最後の最後に救いがあって良かった。ヴァランティーヌとマクシミリアンの前途を祝したい。

今回は全7巻セットを買って、紙の本で読んだけれど、お金に余裕があれば、キンドル版も買っておきたいと思う。