2014年9月7日日曜日

『闇に香る嘘』下村敦史

第60回江戸川乱歩賞受賞作品。

初めて江戸川乱歩賞受賞作に触れたのは、高野和明の『13階段』だった。
確か、中学1年生か2年生くらい。思えば、小説が好きになったのも、ちょうどその頃だった。
『名探偵コナン』の映画、『ベイカー街の亡霊』の脚本を手がけたのが野沢尚で、野沢尚が江戸川乱歩賞受賞者だっていうところから、江戸川乱歩賞って何だ、とか、野沢尚って何者? っていう疑問を持って、そこから小説に触れ始めた。

ここ数年、パッとしなかったんだけど、久々に面白いと思える乱歩賞作品だった。

全盲の老人が、ある時、兄に対して、偽者ではないかという疑惑を抱く。きっかけは、孫への腎臓移植をお願いした時に、腎臓が適合するかどうかを確認する検査すら拒否されたことだ。検査をすると、他人だと分かってしまうから拒否したのではないかと考え、単身、調査に乗り出す。

大戦中の逸話がキーワードになっていて、当時の描写が頻繁に挟まれる。
ラストに近づくにつれ、想像しなかった事実がいくつも発覚し、退屈することがない。

目が見えないからこそ抱く疑念、目が見えないからこそ気付かないこと、そういうものがキーになって、話が進んでいく。
全盲の人間が見る世界が居心地よく感じられた。

アマゾンの評価には、ロバート・ゴダード『闇に浮かぶ絵』に似ているという内容もあるんだけど、私はこの作品読んだことないから、単純にオリジナルとして評価出来た。

これだけ様々な小説が溢れている中、真にオリジナルな作品を作ることがなかなか困難であることを考えれば、面白いかどうかが重要になってくると思う。
そういう観点で、個人的には面白いと判断したい。

2014年9月6日土曜日

『刀語 6』西尾維新

怪力少女、凍空こなゆきの孤独と、鑢七花の成長が光っていた一冊。

ほんの短い時間の間に、自分のコミュニティに属する人間がすべて死んでしまったってなると、どういう感じがするんだろうなぁとか、そんなことを考えた。

七花が人間らしさを見せ始めて、今後の展開が楽しみな、刀語シリーズ折り返し地点。

次作ではいよいよ、七花の姉、鑢七実との対決。
アニメにはない地の文章を読むことで、展開は知ってても、また違った味わいになる。

2014年9月2日火曜日

『マッキンゼー式世界最強の問題解決テクニック』

会社の前専務取締役にいただいた本。

実際的な問題に対して、どのようにアプローチをしていければ良いのか、整理されていて、自分の頭の整理にも役に立った。
仮説を立てて、それを実証するために、分析などを行っていく。その過程での、インタビューやプレゼンテーションの仕方などにも言及されていた。

膨大な量の情報を管理するためには、最も関連のある情報のみを取り出すしかない、ということらしい。

面接調査の方法について書かれている章で衝撃だったのは、マッキンゼー人が、インタビューの最後には、常に「何かお聞きするのを忘れていることはありませんか」という質問を投げかける、ということだ。
この視点は正直なところなかった。今後、使いたいと思う手法だ。
習慣づけようと思う。

最後の章が、自分自身のマネジメントの話だったけれど、ソクラテスの「思慮のない人生など、生きるに値しない」という言葉が使われていた。
確かにその通りだと思う。
パスカルも言ってる。「人間は考える葦である」とか何とか。

仕事においても、娯楽についても、自分の人生についても、しっかりと考え続けたいと思う。

色々と参考になった本だ。
しばらく座右に置いておきたい。

2014年9月1日月曜日

『警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官』梶永正史

『一千兆円の身代金』と並んで、第12回の『このミステリーがすごい!』大賞で大賞を受賞した作品だ。

なかなかの作品だった。キャラがしっかりと立ってるし、結末も読みにくい。
銀行強盗立てこもり事件の現場で捜査二課の警部補がいきなり陣頭指揮官に指名されたり、SATが一人だけ登場したり、突っ込みどころ満載だったけど、こういう無茶を出来るのがフィクションだ。そういう意味では、架空の世界を十分に活かしきれてる作品のように思う。

楽しく読書ができた。