2014年12月30日火曜日

『実験的経験』森博嗣

タイトルのとおり、実験をしている小説だ。面白いかと聞かれれば、面白くないと断言してしまうけれど、読む価値がないかと言えば、決してそんなことはない。存在意義のある作品だと思う。

感想という感想は特にない。というか、明文化しにくい。感じることはあるんだけどなぁ・・・という感じ。

一言だけ言うなら、森博嗣の挑戦意欲がすばらしい、というところだろうか。

『つぼやきのテリーヌ』森博嗣

納得できる考えがたくさんあった。
中には、少しだけ、受け入れるのに抵抗のある考え方もあった。
ただ、総じて、割と森博嗣と考え方が似てるかも、と感じた一冊だった。
一方で、発想は全然違う気もする。

100個のエッセィから成るエッセィ集なんだけど、なんとなくで付箋を付けた箇所が10ヶ所くらいある。備忘録として番号だけ記載しておこう。

38 51 53 57 59 63 67 71 90 96 97 

ちなみに、上記の57については、馬券で儲けた場合は税金がかかるけれど、宝くじは非課税になってる。理由は、本編で森博嗣が言及しているとおり、購入代金のうちのいくらかが収益金として団体に入っているから、購入時点で税金を払っていることになるため。

90に関しては、ぜひ一度、多くの人に読んでもらいたいって感じたエッセィだった。
安易に他者の写真などをツイッタなどで公開していると、犯罪になるという話だ。誰も気づいていないと感じるかもしれないけれど、「実は知られている。知った側も、面倒だから、小さいことだから、と放置しているだけだ。許しているわけではない。しだいに関しは強まるだろう。これはちょっと許せない、という一線を越えたときに、一気にあなたを潰しにかかってくる」という話だった(「」内は作品から抜粋)。
意外に、自分がやっていることの問題に気づいていない人って多いと思う。

『木嶋先生の静かな世界』森博嗣

森博嗣の、研究者としての理想像が描かれてるのかな、という感じがする。自伝的小説だと評価されてるけど、それよりは、自分がなりたかった存在を描いてるように思う。

いずれにせよ、こういう作品を書いてくれる作家がいることが嬉しい。

橋場君が感じていること、木嶋先生が発言したこと、色々なことが、今の自分にはストンと落ちる言葉ばかりで、中には、こういうタイプの先生いたなぁと思うような描写があったりして、読んでて楽しかった。

2014年12月29日月曜日

『レ・ミゼラブル』ヴィクトル・ユゴー

今年の1月から読み始めた。

外出しているときは、Kindleやスマホで読んで、家では紙の本を開いて。

9月くらいに、年内に読み終わらない感じがしたからペースアップして、昨日、ようやく読み終わった。

岩波の全4冊セット、箱入りで、保管に便利だ。ちょっとだけ格好良い。
Kindle版と比べると、だいぶ高いけど、こっちも買って良かったって思う。

物語として見ると、価値があると思えたのは最後の3編くらいだけだ。そこに至るまでの描写は、確かに必要ではあるんだろうけど、冗長すぎてイライラした。
ただ、歴史的な描写がたくさん入ってるから、そういう部分のおかげで本全体の評価が高くなってるのかなぁと感じる。あとは、宗教的観点からの評価が高いんだと思う。

この本に描かれてるすべてを理解できたとは到底思えないけれど、一度読んでおいたことは意味があることだと思う。

またいつか、読み返してみたい。

2014年12月21日日曜日

『名探偵コナン 85』青山剛昌

緋色シリーズが収録されている今巻。
57, 58巻に収録されている話を伏線とした作品になってるんだけど、そんな過去の話を持ち出してくるとは思わなかった。

もともと、これだけの期間を空けようと思ってたのか、それとも、ネタ切れだからそろそろ描こうと思ったのか、そのあたりは良く分からないけど、少なくとも、当時からきちんとこういういう話を描こうと考えていたっていうあたりが、さすがプロだなぁと思った。

工藤優作と赤井秀一、個人的に好きな2人の共演っていうことで、結構面白く読めた。

そして、今巻にも出てくる太閤名人。
棋士としてのスマートさと、普段のキャラクターとのギャップが面白くて良いなぁと思う。

『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚』和月伸宏

初めて『るろうに剣心』を読んだのはいつだっただろう・・・
最終巻が出たのは1999年らしいけれど、たぶん、きちんと読んだのは中学生の頃なんじゃないかと思う。つまり2001年から2004年の間。
今回、かれこれ10年以上ぶりに全巻通してKindleで読んでみた。

1巻と、最終28巻だと絵が結構違うなぁ、という話は置いておいて、久しぶりに読んでも面白かった。

剣心の決意というか信念というか、今の自分とほとんど年齢が違わないのに、その生き様、凄いなぁと思った。
たぶん、幕末から明治維新という、歴史的に見ても大きな変化があった時代を生き抜いた人たちだからこそ、きちんとした決意を持って生きていくことが出来たんだろうなぁと思う。

小さな頃に触れたものって、大人になって忘れていくものもあれば、経験が少ない、積み重ねてきたものが少ない時に触れたからこそ印象に残っているものもある。
この作品は、どちらかっていうと後者の方だ。
また、いつか読みたいなぁと思う。

2014年12月18日木曜日

『明智警部の事件簿 1』天樹征丸,さとうふみや,佐藤友生

『金田一少年の事件簿』の公式スピンオフ作品、『明智警部の事件簿』。

どこまで関与してるのかは分からないけど、原作として天樹征丸とさとうふみやが名を連ねてる。つまり公認っていうことだ。

『金田一少年の事件簿』シリーズでは、警視としての明智さん、ロス市警時代の明智さん、少年時代の明智さんは描かれているけれど、警部時代は描かれていない。
ということで、まだ見ぬ過去が明かされるのではないかと、そんな感じの作品。

パッと見、(絵的な意味で)どうなんだろうなぁという疑念が強かったんだけど、読んでみて、いやはや、なかなかどうして面白い。多少少女漫画タッチな感じはするけれど(偏見)、読みやすいし、作品として面白い。
明智さんが怒る場面、初めて見た。全然表情を歪めずに、でも眉間にしわを寄せて怒るその感じ、嫌いじゃない。

今後が楽しみな作品だ。

『金田一少年の事件簿R 4』天樹征丸,さとうふみや

『金田一少年の事件簿R』の4巻。
今巻は、全巻から続く『狐火流し殺人事件』の解決編までが収録されている。

昔から、金田一少年の良いところは、トリックを見抜くための材料がすべて描かれてるところだと思う。コナンとかだと、この辺がきちんとされてなかったりする。
まぁ、同じ推理漫画とはいえ、ジャンルが違う感じだから一概に比較は出来ないけれど。

『狐火流し殺人事件』の犯人が殺人を実行する動機となる出来事が、非常に悲しいストーリーで印象に残った。

2014年12月15日月曜日

『SHORT GAME』あだち充

あだち充の短篇集、『SHORT GAME』。

割とラブストーリー色が強いけど、あだち充の作品がどれもこれも恋愛を絡めたものであることを考えれば、まぁ、短編になって、その要素が際立っただけなのかなぁと。

一応作品が掲載されてた雑誌名とかは出てるけど、それぞれの作品がどの雑誌にいつ載ってたのか、みたいなことは全然書かれてないから、厳密にはいつ描かれたものなのかは良く分からないけど、ほとんどの作品は、ここ数年内に描かれたものらしい。

こういう短編、私は好きだ。

『MIX 6』あだち充

あだち充の漫画は、さりげない描写が多くて好きだ。
単純な絵なのに、あれだけ機微を描けるのはすごいと常々思ってる。

この『MIX』、『タッチ』の舞台だった明晴学園が舞台で、『タッチ』と同じく双子が主人公。一卵性じゃなくて二卵性みたいだけど。

まだまだ何かをコメント出来るような感じじゃないけど、とりあえず今後の展開に注目、という感じだ。

『探偵の探偵2』松岡圭祐

松岡圭祐の新シリーズの2作目。

ネットワークを遮断してラインのメッセージを閲覧したら、その後ネットワークを復帰させても既読にはならない、
だとか、
数字回転式鍵付きのポストの開け方とか、
開封済の状態のドコモのメールを未開封に戻す方法とか、
色々と勉強になった。

ストーリーも非常に面白い。
痛々しい描写もたくさんあったけど、でも、今までの松岡圭祐のシリーズと比べて、普通の女の子が頑張ってる、っていう感じが非常に魅力的だと思う。

最後には死神の名前が判明して、今後、どうなっていくのかが気になった。このスピードなら、すぐに死神と対決、という感じもするけれど、そしたらシリーズの完結が目前、という感じだし。
明確な目的を持った主人公、というのも松岡圭祐の作品としては初めてのような気がする。

嘘をつくことに対して重く感じていないという玲奈。でも、なんとなく想像してたとおり、最後には授業参観に訪れたところが良かった。

まだ2作目だけど、準レギュラー的立ち位置のキャラクターをあっさりと殺したりしてることが気になった。
死なないことが約束されてる登場人物が戦いに巻き込まれても、ある種の安心感があってつまらない。死ぬかもしれない、っていうことを読者に伝えるためには、こういう展開は大切だ。

ただ、気になるのは、琴葉と、彼女のお姉さんとの関係だ。
さすがにこのままだと、救いがなさすぎる。

2014年12月11日木曜日

『零崎人識の人間関係 戯言遣いとの関係』西尾維新

戯言遣いとの関係と言いながら、戯言遣いはほとんどと言っていいほど登場しない上に、零崎人識と会話を交わしている描写は1つもなかった。挙句の果てに、無関係。

西尾維新らしいと言えば西尾維新らしいのかなぁ。

しかし、戯言遣いが零崎人識といかに似ているのかと同時に、いかに世間ずれしているのかがよく分かった。


以下、どうでも良い覚書。

「彼らは最弱と言っていいほどに弱く、逸脱せず、成長せず、変化せず、仮に逸脱し、たとえ成長し、いやしくも変化したところで、そんなものはすぐに元に戻り、反省も後悔もその場しのぎで、とても簡単に徒党を組み、そうかと思うと簡単に裏切り、何が起きても何事もなかったことにし、すぐに忘れ、とっさに意見を翻し、信条を持たず、怯えては逃げ、狂い、非常に適当で、約束を守らず、ルールを無視し、高いばかりのプライドを簡単に捨て、努力もなしで成果を求める、欲深の、しかし慈悲深い、善良でありながら悪逆で、感情移入とそれに伴う飽きを矛盾なく実現する、深く考え過ぎる割には何も考えておらず、行動力がない割には結果だけは出す、感情的な癖に中途半端に頭のいい、愛すべき群体としての個体。
 ありったけの敬意となけなしの軽蔑を込めて――人は彼らを『一般人』と呼ぶ。」

一般人についての考察としては、取り上げる価値がないかも知れないけれど、でも、非常に面白い考察であることは間違いない。

「変わりたいと思う気持ちは、自殺だよね」

きつい言葉だなぁと思う。

「人間が人間を変えたり出来るかよ。」

同感だ。
人は、変わろうとするから変わるのであって、強制的に変えさせられるなんてことはありえない。

『零崎人識の人間関係 零崎双識との関係』西尾維新

零崎双識との関係――兄弟関係。

なるほど。

家族のために、果たして危険を冒せるだろうかと、そんなことを考えた。

匂宮出夢について、今でも好きだと語る零崎人識の心中は、正直なところ私には良く解らない。ただ、そういうふうに思える相手がいるっていうのは、良いなぁと思った。

とりあえず、面白い一作だった。

2014年12月9日火曜日

『零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係』西尾維新

零崎人識と無桐伊織との関係を描いている今作。

零崎人識の死生観に共感した。

「誤解してんじゃねーだろ―な、伊織ちゃん――人は死ぬぜ、簡単に。生きてる奴が死ぬのは当たり前のことだ。」

きちんと、人が死ぬっていうことを意識しながら生きてる人は、たぶん生きにくいかもしれないけど、強いと思う。かくいう私も、割と生き死にの議論は好きだ。死に方は常に考えながら生きている。

哀川潤が言っていた。

「理不尽に生まれて意味不明に死んでいく」のが人間らしい。でも、どうせなら、死ぬことにくらい、意味を付加させたいなぁと思う。

家族を重んじる零崎一族。殺人鬼集団だけど、良いなぁと思った。
私自身は、家族を尊重したいって思ってるけど、少なくとも、選択できなかった方の家族、自分を産んでくれた親と、親を同じくする兄弟とは、残念ながら価値観が違いすぎて、それほどしっかりとした家族関係を結べなかったようにも思う。
自分で家族を作るときには、お互いに尊重し合える、価値を認め合える、そんな家族を作りたいなって思う。

零崎人識と無桐伊織との関係、素敵だ。

2014年12月7日日曜日

『零崎人識の人間関係 匂宮出夢との関係』西尾維新

第零章にあるように、

「これは、ひょっとしたら実ったかもしれない、小さな恋の物語だ。」

たぶん、253ページで、匂宮出夢の

「お前、僕のこと、好きか?」

という問いに対して、零崎人識が、一言、

「好きだ」

と言えば、あの悲劇は起こらなかったんだろうと考えると、悔しさが募る。
あの一言が、出夢と人識の関係を破綻させてしまった。
もちろん、未来の人類最悪と出会った時点で関係の破綻は避けられなかったと見る向きもあるんだろうけれど。

それにしても、人殺し、しかも、世界が四分の一ほどひっくり返るような、そんな途方もない人殺しの依頼の理由が、一冊の本を読みたかったということだとは・・・
理解できなくもないと思ってしまう自分が怖い。
少なくとも、本当に成し遂げたいものがあれば、手段は選ばない気がする。

西尾維新が描こうとしたものは、たった数ページ、ないしは数十ページに収まるものだ。
でも、そこに説得力を持たせるために、200ページ以上を費やしてる。
描きたいものがあって、どれだけそれに説得力を持たせられるかっていう勝負をしているのが小説家なんじゃないかな、と私は勝手に思ってる。

こういう小説に対してこういう評価を下すと有識者から文句を言われそうだけど、この本は、小説の手本として分かりやすいと思う。

2014年12月6日土曜日

『三国志 5』宮城谷昌光

どんどん歴史が大きく動いていく。
呂布は亡くなり、公孫瓚や袁術も死んだ、袁紹も官渡の戦いの後、結核で死んだことが描かれてる。
曹操は、袁紹の死後、その息子である袁尚を討った後、袁紹の墓前で泣いたという。袁紹の別の息子、袁煕の妻であった人物は、のちの明帝を生むという記述で5巻は終わってる。

天下を取ろうという者もいれば、それをサポートする立ち回りを演じる者もいる。どういう視線で世界を見るかによって、動き方は全然違うっていうことが良く分かる1冊だった。

そんな中、後に歴史に大きく名を残す劉備は、ひたすら逃げ回ってる。勝てる勝負はするけれど、負けそうな勝負は側近すら残して逃げる。
関羽は一度、逃げた劉備とはぐれて曹操の配下になったけれど、敵陣の中にいても、劉備への忠心を忘れなかった。こういう動きは、純粋に尊敬する。

孫策の、死んだ振りをして相手を油断させる方法とか、曹操が、戦場に書物を携えていくという話など、面白い話がたくさんあった。

純粋な歴史小説というわけではなく、きちんと時代考証をしながら、実際はどうだったかを確認しながら話が進んでいくから、まどろっこしい反面、面白い部分もある。

2014年12月3日水曜日

『探偵の探偵』松岡圭祐

『探偵の探偵』
松岡圭祐の新作だ。

今までの主人公たちと違って、特別な技術はないけれど、たぶん、一番、自分の行動に対する信念は強いのかな、と思う。

推理小説に出てくるような探偵ではなく、現実に存在するような、調査活動を主とする探偵業者を描いた作品だ。

過去に、探偵のせいで妹を亡くしてしまった紗崎玲奈が、悪徳探偵を相手に大立ち回りを演じるというストーリー。

「探偵業の業務の適正化に関する法律」、通称「探偵業法」。
こんな法律が現実にあるなんて、小説を読んで初めて知った。
世の中は、探偵を求めてるっていうことなのかなぁ・・・

この小説を読んで学んだことは、
「確証バイアスには気をつけろ」
ということと、
「真実を知るのはいつでも自己責任でしかない」
ということ。
どういう文脈で出てきた話なのかは、本編を御覧ください。

松岡圭祐の他の著作と同じく、やはり、それなりに軽い。重厚感漂う作品ではないけれど、それでも、娯楽小説として文句なしに面白いと思う。
おすすめです。

2014年11月26日水曜日

『読書の腕前』岡崎武志

参考に・・・なったのかなぁ。

「ベストセラーは十年後、二十年後に読んだほうがおもしろい」とか、古本屋との上手な付き合い方など、なるほどなぁと思うような記述はたくさんあった。でも、なんか読後感モヤモヤする。かゆいところに手が届かないというかなんというか。上手く説明できないけれど。

そういう読後感のなかで、個人的に一番気に入ったのは、本の中で引用されている中島らもの教養についての考え。

「『教養』とはつまるところ『自分ひとりでも時間をつぶせる』ということだ。それは一朝一夕にできることではない。働き蜂たちの最後の闘いは、膨大な時間との孤独な闘いである」

昔は、読書してればそれだけで幸せで、自分一人でいたところで寂しさを感じることなんてなかった。
でも、最近は、近くに誰かいて欲しいって感じるようになってしまって、それは、読書熱が冷めてきたっていうことなのかなぁと感じてしまった記述。

もっともっと、読書にのめり込めるような生活を送りたいなぁと感じた。
自分の目標である小説家に、少しでも近づけるように頑張りたい。

最後に、井上ひさしが述べたという指摘を紹介。

「行動成長になると『読者』が『消費者』になり、本を『消耗品』とかんがえる風潮が生まれる」そうだ。

2014年11月24日月曜日

『陰陽師 螢火ノ巻』夢枕獏

『陰陽師』シリーズの最新作。

特別面白いわけではないけれど、かといってつまらないわけでもない。水戸黄門と同じく、安心して付き合っていける作品だ。

今巻は、蘆屋道満の出番が割とあった。2,3作品。
あとがきに作者も書いているように、京の都以外で作品を進行させようとすれば、晴明と博雅を都から移動させる口実を与えなければならないが、道満であれば、どこに出現しても問題ないという理由からだそうだ。

夢枕獏の作品は、正直なところ陰陽師以外は読む気がしない。漫画もそうだ。
でも、陰陽師だけは、誰にでも無難に進めることの出来る作品なんじゃないかな、と思う。

『刀語 12』西尾維新

『刀語』シリーズ最終12巻。

歴史っていうのは、誰かに操作されているものだっていうのが、物語全体を通しての西尾維新の主張なのかなぁと思ったりする。

そういう中で、それぞれが、それぞれの立場で、それぞれの主義主張のもとに生きていくっていう抗いがたい事実を、12冊の中で描こうとしたのが、この物語なんだと思う。

最終巻の、最後のページに記された文章は、やっぱりここまで読み進めてきたら、胸に刺さるような言葉だったり。

「復讐を果たせなかった者。
 目的を果たせなかった者。
 志半ばで倒れた者、思いを遂げられなかった者。
 負けた者。挫けた者。朽ちた者。
 一生懸命頑張って、他のあらゆるすべてを犠牲にしてまで踏ん張って、それでも行為がまったく結果に繋がらず、努力はまったく実を結ばず、理不尽に、あるいは不合理に、ただただ無残に、ただただ無様に、どうしようもなく後悔しながら死んでいった者達の――夢と希望に満ちあふれた未来を予感させる前向きな物語は、ここで静かに幕を下ろす。」

うまく言葉には出来ないけれど、ただの娯楽小説ではあるけれど、でも、シリーズ通して、作者なりに一生懸命生きろっていう叱咤激励をしてくれてるのかなぁと、私自身は受け取った。

『刀語 11』西尾維新

『刀語』も残すところ、今作を含めて2冊。
この連休中には読み終わるんじゃないかと思う。

今巻では、毒刀・鍍の毒に当てられ乱心した真庭忍軍十二頭領の1人、真庭鳳凰を相手に、毒刀・鍍を蒐集した。

腹心とは一緒に手をつないで歩くものだという奇策士とがめの発言には笑ってしまったけれど、それだけ、この11冊の間に仲が深まったんだなぁと思う。

西尾維新が歴史に対してどういう考えを持っているのか、っていうのが、このシリーズを通して見えてくるんじゃないかな、と個人的には思っている。

あと1冊、これから取り掛かろう。

2014年11月18日火曜日

『だから日本はズレている』古市憲寿

とりあえず、面白く読めた。
それほど言葉を選んでるとは言えない、はっきりした物言いに好感が持てる。もちろん、それが正しいかどうかは別問題だけど。

古市さんの存在は、「朝まで生テレビ」とか「とくダネ!」とかで知ってたけど、著書を読むのは初めてだった。

新しい意見として受け入れることが出来た部分が多々あった。

そういう中で、全面的に同意できた主張はひとつだけ、「やっぱり「学歴」は大切だ」という主張だけだ。
それ以外の部分は、なるほどなぁと思う反面、反論したくなるポイントが少なからずあった。

2014年11月17日月曜日

『刀語 10』西尾維新

シリーズ10作目。

『刀語』もいよいよ終盤。
今週末までには読めるんじゃないかと思う。

仙人が現れた。
もはや、たいがい何でもありだ。

そんな中、否定姫の正体が、四季崎記紀の末裔であること、そして、虚刀流が完了形変体刀であるという事実が明るみに出た。
どっちも、予め決まっていた設定なのか、途中出場した設定なのか、怪しい・・・

あと2話。読み終わった後、何の感慨もなくて空虚な感じがする西尾維新作品だけど、最後まで読もうと思う。

『刀語 9』西尾維新

シリーズ9作目。

王刀・鋸を、心王一鞘流当主である汽口慚愧から回収する。

印象的だった言葉がある。

「人間、考えることはできても。
考えないことは、実は意外と難しい。」

考えが浅かったり、考え方が間違ってたりすることは多々あるけど、確かに、その通りなのかもなぁと納得した。

『刀語 8』西尾維新

『刀語』の8作目。

微刀・釵を収集した。

否定姫がジックリと描かれたのは、今作が初だったように思う。
謎に包まれた否定姫もそうだけど、奇策士と七花の行く末も気になる。

『三国志 4』宮城谷昌光

第四巻。
一気に最終巻である十二巻まで読んでしまおうと考えてたんだけど、挫折しそう・・・

今巻の大雑把なあらすじ。

曹操は董卓に敗けて、曹操の父は陶謙に殺された。
董卓は殺され、孫堅も死ぬ。
そんな歴史の一場面。

とりあえず、この後の第五巻までは一旦読もうと思ってるけど、その後は少し休憩。

もう一つ重い作品、『レ・ミゼラブル』も読み終わってないからなぁ。

2014年11月3日月曜日

『遺譜 浅見光彦最後の事件』内田康夫


永遠の33歳かと思われていた浅見光彦が、いよいよ34歳になった。

34歳っていう年齢が、作品を通して重要な要素になっている。34歳という年齢で、何かを実行した人々が沢山出てくる。

そんな中、今作で浅見光彦は決断を迫られる。
日本とドイツに関わる遺産を守っていく役割を担うことを期待される。
最終的にどうしたのかっていう部分については、はっきりとした答えを提示せずに終了するけれど、浅見のことだから、そんな役目は引き受けないんだろうなぁと思う。

いよいよ結婚っていう前フリを信じて読んでたら、結婚しなかった。
いよいよ結婚っていう状態で終わりだった。
でも、一区切りの作品を読めたっていうのは、浅見ファンとしては良かったと思う。私自身が小説家になりたいって思ったきっかけのひとつでもある浅見光彦シリーズ、読んでない作品が結構あるから、ひとつひとつ読破していこう。

『暗殺教室 11』松井優征

『暗殺教室』の11巻。
小説、新書、漫画含めて、今一番はまってる作品と言ってもいいかもしれない。

非常に面白いと思う。

今巻には、「正義」と書いて「ジャスティス」と読ませるキラキラネームの話や、体育祭の話などが収録されてる。

でも、私が一番興味を引いたのは、生徒が間違いを犯したことから進展する一連のストーリー。
学童保育所を経営するおじいさんに怪我をさせてしまったことで、特別授業と称し、その慰謝料分を、自らの労働により支払おうとする生徒たち。
老朽化した建物を直したり、子どもたちに勉強を教えたり。
終わった後、E組の教室で、烏丸が生徒たちに尋ねた一言が印象的だった。

「今回の事は暗殺にも勉強にも大きなロスになったと思うが そこから何か学べたか?」

体験を通して、何を感じたか、何を考えたかを、しっかりと汲み取ることが出来る大人って良いなぁと思う。
会社に入ってから、やたらと聞かれるようになったけど、少なくとも自分がもっと幼かった頃、中学生や高校生の頃に、こういうことを聞いてくれる大人は、周りにいなかったかもしれない。


「自分の一番得意な一撃を 相手の体勢が整う前に叩きこむ」

こういう生き方をしたい。

『三国志 3』宮城谷昌光

第三巻。
曹操が中心人物になりつつある。

霊帝が崩御した後、董卓は独裁者になった。
董卓に戦いを挑んだ曹操は敗けて、孫堅は勝利を収めた。

劉備は黄巾軍に勝利するけれど、宮城谷三国志の中で中心的人物になるためには、まだまだ時間が掛かりそうな予感がする。

2014年10月20日月曜日

『C.M.B. 27』加藤元浩

『C.M.B.』の27巻.

「アステカのナイフ」
ある家庭の父親が,アステカのナイフが喉に刺さり死んでいる状態で発見された.
母親が逮捕され,無実を証明するために息子が森羅を訪ねてくる.

結末が少々ショックなんだけど,ここから得られる教訓は,余計なことはしない,っていうところかな.さじ加減が難しいけど.

「爆破予告」
ブルーブル社の本社ホールで恐竜展が開催される.
開催前日に迫った日,何者かに寄る爆弾予告が.

ニューヨーク証券市場に上場しているという小話も,きちんと核になるストーリーに織り込んでいるところとか,ストーリーテラーとしてさすがだと感じる作品だった.

「幸運」
殺人の容疑で拘置所に入れられた男が,ある人に頼まれたと言う森羅と七瀬のお陰で釈放された.
自分の力でここまで来たという男.彼に迷惑を吹っ掛ける奥さんと友人二人が,実は男を救ってほしいと森羅に頼んだ張本人だった.
そこで男は気づく,自分の力で生きてきたと思っていたけれど,そうじゃなくて,幸運だったからだと.

『暗殺教室』読んでても思うんだけど,架空の登場人物っていうのは,役割を持って出てくる人たちばかりだから,皆賢い.それぞれの人生の中で,それぞれが,様々なことを考えながら生きている.現実の世界を見てみると,どんなに贔屓目に見ても,必ずしもそうじゃない人々がたくさんいると思うけれど,フィクションだと,それぞれの登場人物が,それぞれのポジションで必死に生きてる.
だからこそ,そこから学ぶことはたくさんあるのかなと思う.

「大入道の屏風」
番外編,マウが主役の『M.A.U. “ブラック・マーケットの魔女”の事件目録』の2作目だ.うん,確か2作品目だったと思う.はっきり覚えてないけれど.
マウが経営するお店が金欠になり,キャッシュで50万ドル支払ってくれる客を探したら,その客から,数多のコレクションの中から大入道の屏風を探してほしいという依頼を受けた.
マウは見事にその仕事を完遂したんだけれど,その過程で部下にぶつける発言が印象的だった.
簡単な解決法があるのに解決法が考えつかなかっただけだという部下に対して,

「違う!
あんた達は周りが自分の思う通りになるのを待ってるだけ
現実がどうしようもないときに
知恵を絞って何とかするのが「考える」ってことよ!」

と叱咤する.

頭がいたい・・・
ただ,やっぱり想像力には限界があって,思いつかないという場合もある.
じゃあ,どうやったら思いつくようになるのかっていうと,色々な経験を大切にすることなんじゃないかなぁと個人的には思う.
過去に身に付けた知識,経験に立脚したものが,これから先の自分自身の能力になるわけだから,やっぱり,勉強って大切なんだなぁと思う.

『Q.E.D. 49』加藤元浩

大学院生時代から集め始めて,かれこれ49巻.
まぁ,集め始めた時点でそこそこ発売されてたけど.

49巻は,2作品収録されてる.

「無関係な事件」
失敗続きの就活生が,ちょっとした出来心がきっかけで香港マフィアの抗争に巻き込まれてしまうという話.
メインの話がマフィア抗争の末の殺人事件の解決ではなく,そこに巻き込まれた一般人の物語,というところが面白いと思う.
企業からお祈りメールがたくさん届いて自信をなくしていたけれど,抗争に巻き込まれ,足を怪我した弟を救うために必死になっているところで,「オレ 悪くねぇな」と悟るというオチ.

私もお祈りメールはたくさん届いた.そういう中で,唯一採用してくれた会社に入ったんだけど,自分自身の価値について,それほど考えていたわけじゃない.でも,会社入って思ったことは,そんな自分に期待してくれている人がいるんだっていうこと.
だから,改めて人生を見つめ直して,今自分が出来る精一杯のことをしようと思った.

「ラブストーリー」
大学時代,映画作りに掛けた男.
結末が思いつかなくて,そのまま放置していたものを,完成させようと考えたところで,水原可奈に出会う.ヒロイン役の女性にそっくりだったらしい.
水原可奈をヒロイン役として,ラストシーンに使う映像を撮影後,編集する前に,男は死んでしまった.
映画を完成させようと考えた水原は,その役割を燈馬想に丸投げ.
さてさて,燈馬が考えた結末とは・・・

というお話.
人があの世に持っていけるものは3つだけ,「理」と「美」と「愛」だという話が中核にある.
男には「理」も「美」もないから,持っていけるとすれば「愛」だという.
自分にはピンと来なかった部分が結構ある.
加藤元浩の作品は,深い意味があるようで,単なる娯楽作品のようで,良く分からないんだよなぁ.

2014年10月11日土曜日

『三国志 2』宮城谷昌光

第一巻の感想はこちら

読み始めたのはいったいいつだったんだろうと思うほど以前に読み始めた第二巻.

第一巻の感想を書いてるのが昨年末だから,第二巻は今年に入って開いたらしい.読破するのに約1年掛かってる.本格的に読み始めたのは実は10月に入ってからだから,1週間ほどで読んだという形になるんだけれど.

人物に焦点が当たっていた第一巻に比べて,政治の流れが良く分かる作品になってた.第一巻ではスポットライトが当たっていた曹騰(曹操の祖父)だが,今巻では基本的に出てこず,梁冀の暴政と,それ以降の宦官の暴政がメインになってた.そしてラストに近づくにつれ,いよいよ曹操,孫堅,劉備がメイン人物になる予兆を感じ始めた.黄巾の乱の始まりだ.

苦しかった第一巻.第二巻の終盤になって,ようやく宮城谷三国志の世界観にも慣れ,読むスピードが上がってきた.
この調子で第三巻に手を付けたいと思う.

2014年10月10日金曜日

『ソロモンの偽証 第Ⅰ部・第Ⅱ部・第Ⅲ部』宮部みゆき


『ソロモンの偽証』三部作.面白くて一気に読んだ.

第Ⅰ部は,事件が起こり告発状が送られて,マスコミが騒ぎ立て,その結果新たな死者を生み出すことになってしまった事件の全体像が描かれてる.藤野涼子が学校内裁判をしようと決意するところで終わっている.それぞれの出来事を,それぞれがどういう風に捉えたのかがしっかりと描かれてて,前向きな藤野が微笑ましかった。


第二部は,学校内裁判を開こうと決意し,その開催までの各自の奮闘がメイン.途中である程度の結末は分かったけれど,それでも目が話せなかったのは,彼が,どういう気持ちでいるのかが気になったから.すべてを理解した上で,何を求めようとしているのかが分からなかったから.

第Ⅲ部.学校内裁判での一部始終が描かれてる.


作品全体を通して,アマゾンの評価は様々だったけど,私自身は満点を付けたい.
自分の中学生時代を思い返してみて,今までの自分の人生を振り返って,神原弁護人の気持ちが痛いほど良く分かる.だからこそ,自分の未来について今一度考えてみようと思ったりもした.

宮部みゆきがこの作品で描いたのは,友達を死なせてしまった少年の苦悩だ.
そこから伝わってくるメッセージは,月並みだけど,友達の大切さと,赦し,贖罪かなぁ.

存在自体は知ってたけど,すぐに読もうとは思わなかったんだけど,映画化されることを知って,読んでみようと思った.
きっかけとしてはその程度なんだけど,このタイミングで読めてよかったと思う.

『続・終物語』西尾維新

物語シリーズのおまけ.

読んでも読まなくても変わりがないストーリーではあるけど,これまでの作品をすべて読んだ人になら,勧めてもいい気がする.

物語シリーズは結局のところ,過去に向き合ってこなかった不幸な少年のストーリーなんだろうなぁという結論に至った.

『刀語 7』西尾維新

刀語の第七話。

鑢七花が、姉の鑢七実を殺す一作。作者がこのストーリーで伝えたかったことはいまいちよく分からないけど、ただ、少しずつ変化する七花が、今後どうなっていくのかが気になる作品だった。

最近,自分の中で読書に求めるものが少し違ってきているような感じがする.
昔は面白ければOKっていう感じだったんだけど,ストーリーの良さとか,メッセージ性を求め始めてて,面倒な読者になったなぁと感じる.

将来,1冊でも良いから本を出して認められたいと感じる自分が,読者として気をつけてることは,単なるシリーズ物ならともかくとして,続き物の作品は,きちんと最終話を見届けてから全体として評価したいっていうこと.

だから,刀語も,あと5冊,頑張って読もうと思う.

『ザ・クオンツ』

エド・ソープに始まるクオンツの歴史が描かれてる.
臨場感があって面白かったけれど,自分が求める世界とは違うのかもっていう印象が強く残った.

サブプライムローン危機や,リーマン・ショックの原因になったのがクオンツだ,というような論調で書かれているけど,実際は少し違う気がする.単に運用していただけで,そこにどれほどの金額をつぎ込むかを決めたのは,別の人間のはずだし.

いずれにせよ,読後一番強く感じたことは,もっと人と触れ合えるところで自分の能力を発揮したいっていうことだ.

2014年9月7日日曜日

『闇に香る嘘』下村敦史

第60回江戸川乱歩賞受賞作品。

初めて江戸川乱歩賞受賞作に触れたのは、高野和明の『13階段』だった。
確か、中学1年生か2年生くらい。思えば、小説が好きになったのも、ちょうどその頃だった。
『名探偵コナン』の映画、『ベイカー街の亡霊』の脚本を手がけたのが野沢尚で、野沢尚が江戸川乱歩賞受賞者だっていうところから、江戸川乱歩賞って何だ、とか、野沢尚って何者? っていう疑問を持って、そこから小説に触れ始めた。

ここ数年、パッとしなかったんだけど、久々に面白いと思える乱歩賞作品だった。

全盲の老人が、ある時、兄に対して、偽者ではないかという疑惑を抱く。きっかけは、孫への腎臓移植をお願いした時に、腎臓が適合するかどうかを確認する検査すら拒否されたことだ。検査をすると、他人だと分かってしまうから拒否したのではないかと考え、単身、調査に乗り出す。

大戦中の逸話がキーワードになっていて、当時の描写が頻繁に挟まれる。
ラストに近づくにつれ、想像しなかった事実がいくつも発覚し、退屈することがない。

目が見えないからこそ抱く疑念、目が見えないからこそ気付かないこと、そういうものがキーになって、話が進んでいく。
全盲の人間が見る世界が居心地よく感じられた。

アマゾンの評価には、ロバート・ゴダード『闇に浮かぶ絵』に似ているという内容もあるんだけど、私はこの作品読んだことないから、単純にオリジナルとして評価出来た。

これだけ様々な小説が溢れている中、真にオリジナルな作品を作ることがなかなか困難であることを考えれば、面白いかどうかが重要になってくると思う。
そういう観点で、個人的には面白いと判断したい。

2014年9月6日土曜日

『刀語 6』西尾維新

怪力少女、凍空こなゆきの孤独と、鑢七花の成長が光っていた一冊。

ほんの短い時間の間に、自分のコミュニティに属する人間がすべて死んでしまったってなると、どういう感じがするんだろうなぁとか、そんなことを考えた。

七花が人間らしさを見せ始めて、今後の展開が楽しみな、刀語シリーズ折り返し地点。

次作ではいよいよ、七花の姉、鑢七実との対決。
アニメにはない地の文章を読むことで、展開は知ってても、また違った味わいになる。

2014年9月2日火曜日

『マッキンゼー式世界最強の問題解決テクニック』

会社の前専務取締役にいただいた本。

実際的な問題に対して、どのようにアプローチをしていければ良いのか、整理されていて、自分の頭の整理にも役に立った。
仮説を立てて、それを実証するために、分析などを行っていく。その過程での、インタビューやプレゼンテーションの仕方などにも言及されていた。

膨大な量の情報を管理するためには、最も関連のある情報のみを取り出すしかない、ということらしい。

面接調査の方法について書かれている章で衝撃だったのは、マッキンゼー人が、インタビューの最後には、常に「何かお聞きするのを忘れていることはありませんか」という質問を投げかける、ということだ。
この視点は正直なところなかった。今後、使いたいと思う手法だ。
習慣づけようと思う。

最後の章が、自分自身のマネジメントの話だったけれど、ソクラテスの「思慮のない人生など、生きるに値しない」という言葉が使われていた。
確かにその通りだと思う。
パスカルも言ってる。「人間は考える葦である」とか何とか。

仕事においても、娯楽についても、自分の人生についても、しっかりと考え続けたいと思う。

色々と参考になった本だ。
しばらく座右に置いておきたい。

2014年9月1日月曜日

『警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官』梶永正史

『一千兆円の身代金』と並んで、第12回の『このミステリーがすごい!』大賞で大賞を受賞した作品だ。

なかなかの作品だった。キャラがしっかりと立ってるし、結末も読みにくい。
銀行強盗立てこもり事件の現場で捜査二課の警部補がいきなり陣頭指揮官に指名されたり、SATが一人だけ登場したり、突っ込みどころ満載だったけど、こういう無茶を出来るのがフィクションだ。そういう意味では、架空の世界を十分に活かしきれてる作品のように思う。

楽しく読書ができた。

2014年8月28日木曜日

『ビジネスマン、生涯の過し方』キングスレイ・ウォード

睡魔に襲われながら読み終えた。朝、起きれるかどうか心配だ。

会社の、前専務取締役から譲り受けた数冊のうちの1冊。数冊本をもらって、それで何を伝えようとしたかったのかは、正直なところいまいち分からない。
ただ、この本を読んで思ったことは、しっかりと自分で稼ごうっていうこと。会社に依存するんじゃなくて、会社を上手く使っていかなきゃいけないっていうことを感じた。

就活の頃、数学を究めるっていう道を見失って、半ば投げやりになってた中で、とりあえず面白そうな企業を適当に受けて、適当でも採用してくれた企業に入った。
でも、そういう受け身な人生だとダメだっていうことが、この本を読んで強く感じた。
同じことは、会社の先輩社員の人の話を聞いてても思うことが多くて、たぶん、今、就職活動をすると、もう少し違う結果になるんじゃないかなぁと思う。

本を読んでたら、何箇所か、線が引かれてるポイントがあって、あの人は、こういう部分に注目してたんだなぁとしみじみ。

誰かの期待に応えるっていうのは、生きていく上で大切な要素のひとつだと思う。
だから、今よりも、もっともっと努力を重ねていきたいなぁと感じる。

2014年8月25日月曜日

『一千兆円の身代金』八木圭一

第12回『このミステリーがすごい!』大賞で、大賞を受賞した作品。

社会派すぎる社会派ミステリー。
元副総理の孫を人質に取って、日本が抱える負債、1,085兆円を身代金として要求するという前代未聞の誘拐事件が発生。

正義感を振りかざして誘拐事件を起こす犯人だけど、共感する人たちもたくさんいて、社会問題にも発展していく。


ストーリーとしては面白いと思うんだけど、やはり、社会派色が強いのに、社会的描写が弱い印象を受けた。どこにでも書かれてるような記述が多くて、犯人の動機として、少し弱いんじゃないか、という気がしなくもない。
政府に不満を持ってる人々は、実社会にもたくさんいるけど、それで誘拐事件が発生したことなんて、少なくとも今まではなかったからなぁ。
もちろん、過激な運動を起こした人たちはたくさんいたけど。

今までにない切り口でのミステリーだったから、そういう意味で面白く読むことが出来た。

2014年8月17日日曜日

『襲名犯』竹吉優輔

第59回江戸川乱歩賞受賞作、『襲名犯』。

あらすじとしては、ざっとこんな感じ。

かつて、ブージャムと呼ばれ、崇められた連続殺人犯がいた。彼は逮捕され、最近、死刑が執行されたのだが、近ごろ、新たな連続殺人が発生した。犯人は、現場にブージャムの名を残していることから、ブージャムを信奉していた人間だと判断されている。

要は、かつての連続殺人犯、ブージャムの名を襲名した人間による殺人事件がテーマだ。

劇場型犯罪と言ってもいいような感じだけど、現実世界でもたまーにこの手の犯罪はある気がする。大きなものから小さなものまで規模は様々だけど。

この作品の面白いところは、かつての連続殺人で被害にあった少年の弟が、今回の連続殺人の渦中にいるっていうこと。その事実があることで、物語の深みが増しているように思う。

なんだかんだでエンターテインメントだった。そこまで社会派な感じでも特にない。

新人賞受賞作を読んで毎回思うのは、実際に応募した時の作品から、刊行されるまでの間に、どのくらいの手直しが入っているんだろうっていうこと。たまに、選考委員のコメントで指摘されてる欠点が、まったく見当たらない場合とかがあって、不思議に思う。

2014年7月19日土曜日

『アクアマリンの神殿』海堂尊

今作は、『モルフェウスの領域』でスリーパーだった佐々木アツシが主人公。

佐々木アツシが目覚めてから、少し後の物語。
アツシのメンテナンスを担当していた日比野涼子が、今作ではスリーパーになってて、そのメンテナンスをアツシが行ってる。

海堂尊の作品に出てくるゲーム理論の研究者、曾根崎伸一郎が結構好きだ。
ゲーム理論研究してるからってそんなコメントしないだろうという発言が結構多い。でも、示唆に富む発言が多くて、なるほどなぁと思う。

「闘わず、勝たない。それが最上だ」

とか。まぁ、根拠というか、理由がないから、正しいのかどうかも分からないし、実際的な振る舞い方にまで影響を及ぼすような発言でもなければ、そもそもパーソナリティに左右されるような領域についての発言のような気もするから、ただ、味わい深い発言だ、という程度の認識ではあるけれど。

ゲーム理論は興味持ってる分野だから、きちんと理解したいとは思ってるんだけど、色々な方向に興味持ってたら時間がない・・・

凍眠をして、4年間の空白を持つ少年を中心に話が回って、エンターテインメントとして楽しむと同時に、自分の人生を生きるっていうことと、過去の大切さについて考えさせられた。
学園モノとしても、そこそこ楽しく読めると思う。

グイグイ引っ張っていくような女性が海堂尊の作品には結構多いけど、そういう女性に注目してしまうっていうことは、自分自身、やっぱりそういう女性が好きなのかなぁと感じたりもした。

2014年7月7日月曜日

『暗殺教室 1 - 10』松井優征

『暗殺教室』の1巻から10巻をまとめて。

月を破壊して、来年の3月には地球も破壊すると宣言する怪物が教師としてやってきた。
生徒は、卒業までに担任を殺すことを目標に掲げている。

この作品、大好きだ。
著者はどうして、こんな風に、胸に刺さる言葉を沢山用意できるんだろうと感心する。

例えば、

「第二の刃を持たざるものは・・・
暗殺者を名乗る資格なし」

「女子の方があっさりカッコイイ事しちゃっても それでもメゲずにカッコつけなきゃいけないから つらいよね男子は」

最初のフレーズは、最近尊敬する知り合いからも似たような話を聞いた。今を一生懸命生きるのは大切だけど、それだけじゃダメだと。もし、目の前のものが突然なくなったら、どうなるんだろうって。
だとすれば、やっぱり、第二、第三の選択肢は持っておく必要があるんだと思う。
それは決して逃げではなく、保険。積極的に攻めるための、後ろ盾なんだと思う。

最近グッと来たフレーズは、単行本にはなってなくて、2014年31号のジャンプ、暗殺教室第97話に出てくるフレーズ。

「自分の一番得意な一撃を相手の体制が整う前に叩きこむ」

なるほどなって思った。
別に、暗殺じゃなくても話は同じで、だから、どこで、どんな風に勝負をするか、ひいては、仕事をするか、どんなふうに生きるか、真剣に考えなきゃ行けないんだと思う。

2014年7月6日日曜日

『刀語 5』

虚刀流七代目当主、鑢七花と、尾張幕府直轄預奉所戦軍総監督、奇策士とがめの刀集めの物語も中盤に差し掛かって、少しずつ、少しずつではあるけれど、ただの刀だった鑢七花の意識に変化が生じ始めていると感じる、そんな1冊だった。

薩摩にて、賊刀『鎧』を収集する今作。

相手取る鎧海賊団船長の校倉必が、とがめに惚れたと言ったものだから、七花が無意識に嫉妬するという面白い場面も見られた。

自らを、一本の刀だとしか思ってこなかった七花が、ここに来て、初めて、刀であると同時に人間であるということを明確に意識した。

それで、どんなふうに変わるのかは良く分からないけれど、でも、何かは変わるんだろうなぁと、そんな予感がする一場面だった。

それから、七花が姉の七実の言いつけを忠実に守って心に秘めてきた隠し事。今作の最後の最後で、とがめに対して明かしてしまった。
言っていいことと悪いことが世の中にはあるけれど、墓場まで持っていかなければいけないだろう2つの隠し事を、これまでひたすらに秘めてきたにも関わらず、いとも簡単に白状してしまったことが驚きだった。

アニメを見てからだいぶ日が経ってる。
色々と忘れてる展開もあるんだなぁと、読んでて思った。