第60回江戸川乱歩賞受賞作品。
初めて江戸川乱歩賞受賞作に触れたのは、高野和明の『13階段』だった。
確か、中学1年生か2年生くらい。思えば、小説が好きになったのも、ちょうどその頃だった。
『名探偵コナン』の映画、『ベイカー街の亡霊』の脚本を手がけたのが野沢尚で、野沢尚が江戸川乱歩賞受賞者だっていうところから、江戸川乱歩賞って何だ、とか、野沢尚って何者? っていう疑問を持って、そこから小説に触れ始めた。
ここ数年、パッとしなかったんだけど、久々に面白いと思える乱歩賞作品だった。
全盲の老人が、ある時、兄に対して、偽者ではないかという疑惑を抱く。きっかけは、孫への腎臓移植をお願いした時に、腎臓が適合するかどうかを確認する検査すら拒否されたことだ。検査をすると、他人だと分かってしまうから拒否したのではないかと考え、単身、調査に乗り出す。
大戦中の逸話がキーワードになっていて、当時の描写が頻繁に挟まれる。
ラストに近づくにつれ、想像しなかった事実がいくつも発覚し、退屈することがない。
目が見えないからこそ抱く疑念、目が見えないからこそ気付かないこと、そういうものがキーになって、話が進んでいく。
全盲の人間が見る世界が居心地よく感じられた。
アマゾンの評価には、ロバート・ゴダード『闇に浮かぶ絵』に似ているという内容もあるんだけど、私はこの作品読んだことないから、単純にオリジナルとして評価出来た。
これだけ様々な小説が溢れている中、真にオリジナルな作品を作ることがなかなか困難であることを考えれば、面白いかどうかが重要になってくると思う。
そういう観点で、個人的には面白いと判断したい。
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